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2024年09月20日号 (第517)
後継者不在で社長が急逝した場合の対応
みなさん、こんにちは。自民党総裁選のニュースが多いですね。アメリカの大統領選も含め、日本の経済に影響するので動向が気になるところです。
さて今回は、後継者がいない状態で社長が急に亡くなった場合の対応について、ご紹介していきます。
社長が亡くなった場合の対応
税理士を初めて30年も経つので、現職の社長が亡くなられたケースに何件か遭遇しました。後継者がいる場合は、それほど大きな混乱は生じません。ところが、後継者がいないケースもあります。社長が一人で会社を運営していて借金もないケースであれば、正式に会社を清算させる場合もありますし、そのまま放置してしまう場合もありますが、大きなトラブルにはなりません。
従業員が一定数以上いる場合、あるいは会社に借入金がある場合は、なかなか難しい問題が生じます。従業員から給料の支払いが求められますし、今後の生活のことがあるから会社を継続してほしいと言われます。また会社が銀行から借入れしている場合は、社長が連帯保証人となっており、社長の相続人が借金返済を迫られるなど、借入金の問題をクリアしないと住む家までなくなってしまうなどのリスクもあります。
社長死亡へのリスク対策
社長に万が一のことがあった時の対策として、保険の利用を想像されるケースが多いと思います。多額の借入れがある場合は、保険金で借金を返済して会社を畳んでしまうという選択肢を残しておくことも有効です。
それ以上に有効なのは、内部留保を大きくして、借金も限りなくゼロという強い体質の会社を作ることです。会社は設備投資が必要な業種など、借金が避けられないケースもありますが、利益を出し続けている会社は無借金というケースがよくあります。内部留保に余裕があれば従業員に退職金を支払い、きれいに会社を畳むこともできます。さらに、利益を出し続けている組織ならM&Aで買い取ってもらうなど、出口の選択肢も増えます。
後継者がいない場合の対応
後継者がいない状態で社長が急逝し、配偶者が会社を引き継いでうまくいくケースも存在します。製造業で製造設備があり、工場で働く従業員もいて、製品を製造すれば売れるという仕組みができていて、順調に会社が回っていくという状況です。
一方、製造設備と従業員が揃っていても生産管理がうまくいかず、受注が減少して2年も持たずに破産してしまうケースもあります。
後継者が定まらない段階で経営者が急逝した場合に、遺族がどのような対応を取るかについて家族と話をしておくことは重要です。
例えば会社を畳んでしまう想定であれば、会社の借金は保険金で返済できるように、従業員へは100万円ずつ退職金を支給して辞めてもらうように、残りは死亡退職金として遺族が受け取るようになど、経営者が万が一に備えて具体的に踏み込んで話しておく、メモを残しておくなどが重要です。
あるいは、後継者はいなくても信頼できる同業者がいる場合、会社ごと譲ってしまうなどの選択肢も考えられます。この場合も、具体的に誰に相談すべきかを話しておく、メモを残しておくなどの対応をしておくことが重要です。
事業承継の問題については、後継者が定まっている場合の手法についてよく語られます。またガンなどで余命宣告されるケースなどは、生存中にある程度方向性を定めてしまうことも可能です。ところが、まったく後継者が定まらない状態で経営者が急逝してしまう場合、大きな混乱が生じますし、遺族も対応方法がわかりません。後継者がいない場合こそ、自分に万が一のことが起こった時の対応について検討しておくことが必要です。
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